食事由来の感染で、比較的鑑別診断に挙がらない病原微生物由来食中毒があります。治療可能にもかかわらず診断が著しく遅れると患者に後遺症、死亡を招く可能性のある疾患です。
1)ブルセラ症
ヒツジ、ウシ、イヌ、ブタなど様々な動物を宿主とするブルセラ属菌による感染症です。一般的なのはB.melitensis(ヒツジ)によるもので汚染されたミルクや乳製品によるものですが、日本国内における報告例は近年ありません。中東や中央アジアなどでヤギやヒツジの乳製品を摂取した病歴が疑うきっかけとなります。比較的足の遅い細菌感染症でもあり、骨髄炎(仙腸関節炎)が特徴的です。
2)施毛虫(Trichinella属)
日本国内の感染ではクマ食の病歴につきます。症状としては、全身の筋肉痛で発症することからリウマチ性多発筋痛症に似た疾患の代表として挙げられます。末梢血液検査で好酸球上昇とそれに伴う症状があれば、加熱が不十分なクマ肉を食べていないか確認が必要です。クマ以外にもウシ、ブタの筋肉内にも寄生の可能性がありますが、国内発症報告はありません。
3)肝蛭(fasciolosis)
主に肝臓に寄生するFasciola hepaticaによる蠕虫感染症です。主に終宿主であるウシの排泄物に汚染された水系の野菜を生で食べることで感染します。末梢血液検査で好酸球上昇や画像診断で肝腫瘤を認めることで診断に至ることが一般的です。
4)肺吸虫(paragonimiasis)
文字通り肺に感染するParagonimiasis westermaniまたはP.miyazakiiによる感染症です。主な標的臓器は肺であり、画像診断で肺の結節性病変を、抹消血液検査で好酸球の上昇を認めて疑われることが多い。第二中間宿主の淡水ガニやその料理場でのコンタミネーションによる感染が一般的です。また、施毛虫と同様に、イノシシ肉やシカ肉を生で食べることで感染します。
5)A型肝炎
汚染された海産物での感染が一般的です。急性肝炎の鑑別で挙がり、血清抗体検査で診断されることが多いのですが、国内発生例では原因食が不明なことが大半です。
6)E型肝炎
もともと食中毒の原因ウイルスという認識はなかったのですが、わが国においてシカの刺身で家族発生があったことで、食中毒の原因微生物として世界で初めて報告されました。
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