カンピロバクター感染症は胃腸炎症状を主たる臨床像とし、その原因菌の95〜99%はCampylobacter jejuni subsp.jejun(以下C.jejun)で、食中毒起因菌に指定されて以来、食中毒事例数においてサルモネラ、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌に次ぐ発生頻度を示しています。
一般に、細菌性食中毒は夏季に多発し、冬季に減少しますが、本食中毒においては、その発生は5〜6月に多く、7〜8月はやや減少、再び9〜10月頃に上昇傾向を示しています。しかし、東京都内では、1999年以降、冬季の発生が著しく増加しています。
臨床症状
症状は下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感などで、他の感染型細菌性食中毒と酷似していますが、潜伏期間が一般に2〜5日間とやや長いことが特徴です。感染性腸炎研究会資料によると、入院患者の98%に下痢が認められ、その便性状は水様便(87%)、血便(44%)、粘液便(24%)です。特に粘血便がみられる場合は、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌、腸炎ビブリオ、サルモネラ等による腸炎との鑑別を要します。
下痢は1日に10回以上に及ぶこともありますが、通常2〜6回で1〜3日間続き、重症例では大量の水様性下痢のために、急速に脱水症状を呈します。また、腹痛は87%、嘔吐は38%にみられた。発熱時の平均体温は38.3℃で、サルモネラ症に比べるとやや低いとされています。
診断
C.jejuni感染症の診断は臨床症状からは困難で、糞便等から本菌を分離することが最も確実です。培養は微好気培養により最低2日間(37〜42℃)要します。本菌の同定には通常3〜5日間程度必要であり、迅速性・正確性を期するために、PCR法等の遺伝子診断技術が必要不可欠となっています。
治療・予防
患者の多くは自然治癒し、予後も良好である場合が多く、特別治療を必要としませんが、重篤な症状や敗血症などを呈した患者では、対症療法と共に適切な化学療法が必要です。第一選択薬剤としては、エリスロマイシン等のマクロライド系薬剤が推奨されます。
カンピロバクター感染症の予防は、食品衛生の面からみると、他の細菌性食中毒起因菌と同様に、獣肉(特に鶏・あひる・シチメンチョウなどの家禽肉)調理時の十分な加熱処理、また、調理器具や手指などを介した生食野菜・サラダへの二次汚染防止に極力注意することです。また、本菌は乾燥条件では生残性が極めて低いことから、調理器具・器材の清潔、乾燥に心がけることも重要です。
一方、食品の嗜好面からは、生肉料理(トリ刺し、レバ刺し等)の喫食は避けるべきです。その他、イヌやネコ等のペットからの感染例も報告されており、接触する機会の多い幼小児及び高齢者等に対する注意と、ペットの衛生的管理が必要です。
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