ウエルシュ菌(Clostridium perfringens )は、ヒトや動物の大腸内常在菌であり、下水、河川、海、耕地などの土壌に広く分布します。ヒトの感染症としては食中毒の他に、ガス壊疽、化膿性感染症、敗血症等が知られています。
ウエルシュ菌食中毒は、エンテロトキシン産生性ウエルシュ菌(下痢原性ウエルシュ菌)が大量に増殖した食品を喫食することにより、本菌が腸管内で増殖して、芽胞を形成する際に産生・放出するエンテロトキシンにより発症する感染型食中毒です。
主な原因食品には、カレー、スープ、肉団子、チャーシュー、野菜の煮物(特に肉の入ったもの)などがあります。これは、食肉や魚介類のウエルシュ菌汚染率が高いためです。さらに、食肉にはグルタチオン等の還元物質が豊富に含まれているので、調理食品内は嫌気状態になり易く、ウエルシュ菌の発育に適しています。
臨床症状
ウエルシュ菌食中毒の潜伏時間は通常6〜18時間、平均10時間で、喫食後24時間以降に発病することはほとんどありません。主要症状は腹痛と下痢です。下痢の回数は1日1〜3回程度のものが多く、主に水様便と軟便です。腹部膨満感が生じることもありますが、嘔吐や発熱などの症状はきわめて少なく、症状は一般的に軽くて1〜2日で回復します。
なお最近、食中毒とは異なる感染経路で発生するウエルシュ菌集団下痢症も報告されています。高齢者福祉施設で発生する事例が多く、院内感染と認められた例もあります。これらの事例では、症状は軽度の下痢、患者発生は持続的であり、食中毒と異なり、患者発生の鋭いピークが認められないのが特徴です。患者周辺の環境(ベットの柵、カテーテル、トイレの床、便器等)から、患者と同一のエンテロトキシン産生性ウエルシュ菌が分離されることも多い。
診断
食中毒の最も確実な診断は、患者糞便や推定原因食品等からエンテロトキシン産生性のウエルシュ菌を分離することです。健康人のエンテロトキシン産生菌の保菌率は約1%です。患者糞便の検査では、非病原性の常在ウエルシュ菌との区別が重要です。
治療・予防
治療としては対症療法が中心です。食中毒は、ウエルシュ菌が1g当たり10万個以上に増殖した食品を喫食することで発生することから、予防の要点は食品中での菌の増殖防止することで、加熱調理食品は小分けするなどして急速に冷却し、低温に保存する。保存後に喫食する場合は充分な再加熱を行うことが重要です。大量調理時に発生することの多い食中毒であり、前日調理、室温放置は避けるべきです。
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