食事由来の感染で、比較的鑑別診断に挙がらない病原微生物由来食中毒があります。治療可能にもかかわらず診断が著しく遅れると患者に後遺症、死亡を招く可能性のある疾患です。
1)ブルセラ症
ヒツジ、ウシ、イヌ、ブタなど様々な動物を宿主とするブルセラ属菌による感染症です。一般的なのはB.melitensis(ヒツジ)によるもので汚染されたミルクや乳製品によるものですが、日本国内における報告例は近年ありません。中東や中央アジアなどでヤギやヒツジの乳製品を摂取した病歴が疑うきっかけとなります。比較的足の遅い細菌感染症でもあり、骨髄炎(仙腸関節炎)が特徴的です。
2)施毛虫(Trichinella属)
日本国内の感染ではクマ食の病歴につきます。症状としては、全身の筋肉痛で発症することからリウマチ性多発筋痛症に似た疾患の代表として挙げられます。末梢血液検査で好酸球上昇とそれに伴う症状があれば、加熱が不十分なクマ肉を食べていないか確認が必要です。クマ以外にもウシ、ブタの筋肉内にも寄生の可能性がありますが、国内発症報告はありません。
クドア食中毒は、ヒラメなどの魚の筋肉に寄生する粘液胞子虫クドアによるもので、2000年頃から報告されるようになった新規の食中毒です。2014年1〜4月、7件のクドア食中毒が発生し、92人が発症したことが報告されており、いずれもヒラメ刺身を食べた後の発症でした。
それまで、ヒラメやマグロなどを生食した数時間後に発症する激しい下痢・嘔吐は、“謎の食中毒”とされていました。症状は一過性で、数時間程度で改善します。死亡例の報告はなく、予後が良好なことも特徴のひとつです。食中毒の原因として一般的なノロウイルスや細菌などの既知の病原物質が同定できなかったため、そう呼ばれていました。
アイチウイルス は、1989年に愛知県衛生研究所でカキ(牡蠣)が原因と推定された胃腸炎の集団発生事例から発見された、直径30nmのエンベロープのないプラス鎖1本鎖RNAウイルスです。ピコルナウイルス科の新しい属であるコブウイルス属(コブは日本語で、粒子表面がごつごつしていることに由来)に属します。日本での検出頻度は高くありませんが、アジアの発展途上国の小児の下痢便から検出されることがあり、胃腸炎を起こすウイルスであると考えられています。
血清型は1つでA、B型2種類の遺伝子型に分類されますが、2008年にC型の存在が報告されました。また、下水中にはA、B、Cいずれの型にも属さない独立した遺伝子が検出されており、血清型の異なるウイルスの存在が予測されています。コブウイルス属には、他にウシ由来のウシコブウイルス種があります。
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