慢性の 旅行者下痢症 とは、帰国後1日に3回以上の下痢により、最低5回の医療機関受診および最低5日間の入院歴があり、15日間にわたり就労不可能な状態および4〜7ヶ月間治癒しない状態と定義されています。
長引く下痢 の原因としては、各種微生物の持続感染および重複感染、感染性腸炎後の腸内細菌叢の変化、消化吸収不全、炎症性腸疾患などが考えられますが、最近では感染後過敏性腸症候群(post infectious irritable bowel syndrome:PI-IBS)が注目されています。
1)持続感染
サルモネラ属は保菌状態となることがありますが、下痢症状が長引くことはまれです。一方で寄生虫感染は、症状の出現がゆっくりでかつ軽症であることが多いため、慢性の旅行者下痢症の起因病原体として考慮すべきです。
2)重複感染および二次感染
長引く下痢の場合、初期の治療が完了しても他に寄生虫感染などの重複感染があり一方の病原体に対して治療が行われていないことが原因となることもあります。まれに、使用された抗菌薬の頻用によるクロストリジウム・デフィシル感染により腸炎をおこすことがあります。
3)感染後過敏性腸症候群(PI-IBS)
PI-IBSの診断は、これまでに腸管機能異常が認められたことがない健常人が急性下痢症に罹患した後、過敏性腸症候群のRomeIII基準を満たす場合に疑われます。開発途上国への旅行者で下痢症状を認めた者のうち7〜14%がPI-IBSに移行したとの報告もあります。
※過敏性腸症候群のRomeIII基準
・最低3ヶ月以上の臨床症状(連続的である必要は無い)
・腹痛または腹部違和感が下記2項目以上の状態を伴い、症状の発端が最低6ヶ月以上前にある。
1)排便によって軽快する
2)排便頻度の変化で始まる
3)便性状の変化で始まる
・急性腸炎または旅行者下痢症発症後
・各種微生物学的検査が陰性および器質性疾患がない
▽慢性の 旅行者下痢症 のキーワード
▽次の記事、前の記事
当サイトのRSS
新着アイテム
ジャンル
Copyright (C) 2008
by 下痢(げり)便秘(べんぴ)おなかSOSドットコム