ウイルス性胃腸炎のワクチン予防として、現在ロタウイルスワクチンのみが利用可能です。2009年にはWHO(世界保健機構)がロタウイルスワクチン定期接種を勧奨し、世界120か国以上で認可され、約30か国で定期予防接種に組み込まれています。日本でも2011年にロタリックス、2012年にロタテックも認可されましたが、摂取回数の違い(2回と3回)、腸重積症の副反応などの課題が残されています。
1)ロタリックス(Rotarix)
ヒトロタウイルスG1P[8]株を親株とし、細胞培養とプラーク純化した株を成分とした単体ワクチンです。標準接種時期は生後2〜4か月の2回で、初回接種を生後6〜14週6日間に行うことになっています。
ロタリックスはG1P[8]株による重症下痢症に対して92%、P[8]を共有するG1、G3、G4、G9株に対しても87%の有効性が示されています。一方、血清型の交差性がないG2P[4]株による重症下痢症に対しての有効性は欧州の臨床試験では87%であることが報告されています。
2)ロタテック(RotaTeq)
ウシロタウイルスWC3株を親株(G6P[5])とし、ヒトロタウイルスで多い血清型G1〜G4のVP7蛋白とP[8]のVP4蛋白をコードする遺伝子をヒトロタウイルスからとった5種類の遺伝子分節組換え体を成分としています。標準接種時期は生後2・4・6か月の3回で、初回の接種を生後6〜14週6日の間に行うことになっています。
有効性については、重症下痢症の発症を98%、またロタウイルスによる入院を96%予防することが示されています。
・ロタウイルスワクチンの課題
現行のロタウイルスワクチン(ロタリック、ロタテック)における問題点は、ワクチン自体に由来する問題と、ワクチン接種や制度の問題に大きく分けられます。
1)ワクチン自体の問題
安全性に関する最初の問題は、ロタシールド接種後に1万人に1人の割合で発生した腸重積症の副反応です。現行ロタウイルスワクチンの安全性は大規模臨床試験で確認されましたが、市販後調査での安全性についての結論は出ておらず慎重に監視していく必要があります。市販後明らかになった問題として、ブタサーコウイルスのワクチンへの混入が挙げられます。このウイルスのヒトへの病原性は確認されておらず、FDAの検討ではワクチン接種のメリットのほうがリスクをはるかに上回ると結論しました。また生ワクチンである現行ロタウイルスワクチン接種において、流行する野生株の遺伝子型の変化や野生株との遺伝子組換えの問題についても継続的な監視が必要です。
2)ワクチン接種や制度の問題
現行ロタウイルスワクチンの標準的な初回接種時期は生後2か月ですが、最短で生後6週から可能であり、わが国のこれまでのワクチンの中で最も早い接種時期となります。また、Hib、肺炎球菌、三腫混合(diphtheria,pertussis,tetanus:DPT)、ポリオ、BCGの各ワクチンと重なるため、全てのワクチン接種のためには同時接種が必要となってきます。その他の問題として、ロタリックスとロタテックの接種回数の違いあり、互いのワクチン併用は原則認められていません。
腸重積症の既往、未治療の先天性消化管障害、重症複合免疫不全症の児に対しては接種不適ですが、生後2か月のロタウイルスワクチン接種時に上記疾患の診断がされていない可能性もあるため注意が必要です。またわが国ではロタウイルスワクチンが定期予防接種ではないため現段階で25,000円程度の接種費用負担の問題も残されています。
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