細菌性赤痢の主な感染源はヒトであり、患者や保菌者の糞便、それらに汚染された手指、食品、水、ハエ、器物を介して直接、あるいは間接的に感染します。世界的にまん延していて、日本でも発展途上国からの帰国者などから患者が多く発生しています。
感染する動物は、主に人や一部の霊長類であり、人から人へ感染をするので、国内で発生することも少なくありません。保育園や学校、福祉施設、宿泊施設などでは、人と人の接触が多いため集団発生になることがあります。
感染菌量は10 〜100個と極めて少なく、家族内での二次感染は40%もみられます。世界的にみれば患者の約80%が10 歳未満の小児です。感染力が極めて強く、少量の菌でも感染するこの菌は、便とともに排出されるので、感染者の手指や食品がほんの少し汚染されていても、口から体の中に入ることによって感染します(経口感染)。また、小児では接触感染があります。
感染経路のひとつとして食品がありますが、直接手指が触れる食品群(にぎり寿司等)から感染することが高く、さらに、生水の摂取による感染や、乳幼児がおもちゃ等を口に含んだりすることによる物品からの感染(二次感染)も報告されています。
経口摂取された赤痢菌は大腸上皮細胞に侵入した後、隣接細胞へと再侵入を繰り返し、上皮細胞の壊死、脱落が起こり、血性下痢をおこします。
通常、潜伏期1 〜3日で発症し、全身の倦怠感、悪寒を伴う急激な発熱、水様性下痢を呈します。発熱は1〜2日続き、腹痛、しぶり腹(テネスムス)、膿・粘血便などの赤痢症状をおこします。近年では重症例は少なく、数回の下痢や軽度の発熱で経過する事例が多いようです。
・治療・予防
治療には対症療法と抗菌薬療法があります。
対症療法としては、強力な止瀉薬(下痢止め薬)は使用せずに、乳酸菌、ビフィズス菌などの生菌整腸薬を併用します。解熱剤は脱水を増悪させることがあり、またニューキノロン薬と併用できない薬剤が多いので慎重に選択します。脱水が強い場合には、経口補水塩を使用します。
抗菌薬療法としては、成人ではニューキノロン薬、適用のある小児にはノルフロキサシン(NLFX)、適応のない5歳未満の小児にはFOM を選択し、常用量5日間の内服投与を行います。治療終了後48時間以降に、24時間以上の間隔で2〜3回糞便の培養検査をし、2回連続で陰性であれば除菌されたとみなします。
予防の基本は感染経路を遮断することにあります。上下水道の整備と個人の衛生観念の向上(特に手洗いの励行)は、経口感染症の予防の原点です。輸入例が大半を占めることから、汚染地域と考えられる国では生もの、生水、氷などは飲食しない事が重要です。国内では、小児や高齢者などの易感染者への感染を防ぐことが大切です。
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