下痢とは水分を多く含む形のない糞便を排出する状態で、24時間の糞便重量が200g以上、または糞便中の水分量が200mL以上と定義されます。
また、便秘は糞便の腸内滞留時間が延長し、水分量が少なくなることにより、糞便が硬くなって肺便に困難を伴う状態で、本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態と定義されます。
・腸管の吸収不全による下痢:腸管で吸収されなかった物質が高濃度で腸管に滞留することにより、腸管内の浸透圧が高まり、これを希釈するために多量の体液が腸管内に移行することが原因で起こる下痢です。
吸収不全の原因として
1)消化酵素の欠乏により栄養素を消化吸収できない(乳糖不耐症、胆・膵臓疾患などによる脂質の消化吸収障害)
2)吸収されない物質の過剰摂取(ソルビトール、ラクロース、マンニトールなど)
3)腸管吸収能以上の摂取
・麻痺(摂食から18〜36時間)
ボツリヌス菌
低温で増殖するリステリア属、エルシニア属と並んで、真空パック内で増殖可能なので食品衛生の観点から重要な微生物です。左右非対称性の脳神経麻痺で始まり、対称性の弛緩性麻痺がおこり、呼吸筋麻痺を合併します。症状としては、吐き気50%、下痢20%程度です。合併する原因毒素はA・B・E・Fであり、非可逆性にアセチルコリン遊離を神経筋接合部でブロックすることで発症します。これらの部位の再生には数週間〜数ヶ月かかるため、重症の場合は長期の人工呼吸管理が必要となります。腸内細菌叢が完成していない新生児がはちみつを食べるのがリスクとされるのは、少量の芽胞が含まれている可能性があるためです。汚染された真空パック食材や缶詰、自家製発酵食品などもリスクとなります。
食中毒の症状から原因食材や病原微生物を特定できる可能性があります。
・嘔吐と吐き気(摂食から1〜8時間)
1)黄色ブドウ球菌の毒素性食中毒
原因食材として、素手で握ったおにぎりがあります
2)Bacllus cereus(セレウス菌)の毒素
嘔吐毒素型タイプの潜伏期は0.5〜6時間程度とされます。下痢毒素型と同様に、国内外ともチャーハンが有名です。わが国では野外の餅つきなどの集団発生例もあります。食材が汚染され、セレウス菌が発芽・増殖する常温での保存が原因となります。
・腹痛と下痢(8〜16時間)
1)ウェルシュ菌
主症状は水様性の下痢症と腹痛です。加熱食材で増殖したあとにゆっくり冷やす段階で偏性嫌気性菌であるウェルシュ菌が増殖し、これを摂取すると腸管内でエンテロトキシンを産生して発症します。作り置きのシチューやカレーの常温保存などが原因となります。
2)Bacllus cereus(セレウス菌)の下痢毒素型
摂取歴は嘔吐毒素型と同様で下痢症状がメインとなります。症状は毒素型でもあり、発熱を伴わない水様性下痢症が特徴です。
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