糞便移植療法(fecal microbiota transplantation:FMT)は、健常者の便を患者の腸内に投与することで患者の腸内フローラを正常化させることを目的とした治療法です。
クロストリジウム・ディフィシル感染症(Clostridium difficile infection:CDI)は抗生剤の投与などにより正常な腸内フローラが攪乱されて多様性が低下し、菌交代症が生じることで発生すると考えられている疾患です。下痢、発熱などを主症状とし、多くは原因となる抗生剤の中止やメトロニダゾール、バンコマイシンといったクロストリジウム・ディフィシルに有効な抗生物質による内服治療により改善しますが、なかには再発を繰り返す難治例も存在します。
2013年にvan Noodらが報告した糞便移植療法(FMT)は多くの文献で再発性CDIに対してその有用性が報告されてきました。近年では潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患に対して臨床応用がなされていますが、その有用性に関しては論議が分かれています。
プロバイオティクス(probiotics)は「十分な量が投与された場合、宿主に健康上の利益をもたらす生きた微生物」と定義されます。また、上部消化管で分解されず、腸管内で生体に利益をもたらす自律性微生物の増殖を促進させるプレバイオティクス(prebiotics)とプロバイオティクスを合わせたものをシンバイオティクス(synbiotics)と呼びます。
プロバイオティクスは生体への様々な利益的作用を有していることから、臨床医学への応用が行われ、腸管感染症、炎症性腸疾患、ヘリコバクター・ピロリ感染症、尿路感染症、細菌性膣炎、呼吸器感染症などに対する臨床効果の研究成果が報告されています。
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